高圧ブラスト

2020年7月24日金曜日

2020.07.24 ISO8501-1 のSa2とか2.5とか3の数値的意味がどこにも記載されていないので考えてみた。

Abrasive blast-cleaning methods for surface preparationを2016年に改定した時は2012年ころから原文のISO8501-1、SSPCなどをよく読んで解釈し、海外の同業者に確認して執筆した。
また、2011年からは日本防錆技術協会の防錆学校の物理的機械的素地調整方法の講師を務めさせてもらっているのだが、そのときまで、Sa2~3までの除錆度における除錆率の数値の意味など考えたこともなかった。多分、現在日本でこの除錆度の中の除錆率の意味について悩んでいる人はいないと思う。アメリカではSSPCとの比較の問題でとかく論議しているトピックは見かけるのだが、そもそも、ビジュアル判定(*顕微鏡などを使わず肉眼判定することと記載されている。)に数値など意味がないので真面目に考えた事はなかった。しかし、講義したりJISを改定するものが知らないでは済まされないので、同業の欧米人に聞いてみたがあまりよく知らないようだった。ルールなので守るだけで意味は知らないのだ。

そもそも、Sa2.5は95%、Sa3は100%除錆率が自然数表記なのにSa2は2/3という有理数表記(66.7とか66.8はSSPCが置き換えた。)というのは変過ぎる。
それとその数値は何を根拠に決めたのか?そんな事を聞いても誰も教えてくれない。
元は今から50年も前からあるスェーデン規格から始まっている。
その当時はインターネットどころかパソコンすらない。私が初めて某メーカーで開発部門にいたときでさえ電子顕微鏡があるのに表面粗さ測定は針が直接紙に記録した波形を紙の方眼のマス目を数えさせられて、Raを算出させられたのだ。それより以前の話であるわけだからこんな数値の具体的実験結果による根拠がないと決めつけていた。具体的実験結果による根拠というのは、N数をできるだけ多くとった、除錆率の変化に伴う密着度や粗さの変化に伴う結果などのことを言いたいのだが見たことはない。50年も前にそんなことやってないと思う。

しかし、初めて決める人はかなり頭脳的にも高位無い人が決めるのだから、「適当だぜ」とか「俺が良いっていうんだからいいんだよ」というレベルの低い事はないはずだ。
反面、現在だれも文句はないし世界的にはうまくいってるからこの件でなぜ?を言い出す人はいない。
(*SSPCのアメリカ人だけはブラスト発祥の国なのでISO8501-1に対抗し独自のSSPC(NACE)で新しい処理グレードを出し続けている、内容は基本的には同じだが。)


最近、自律型ロボットの論文を読んでいるときに気が付いたのだが、やたらとネイピア数の指数関数や統計学的推測をアルゴに使うので毎日、標準ガウスを見ていて気が付いた。
「標準正規分布の場合の標準偏差幅としてσの時68%、2σの時95%、3σの時99.7%と除錆率に値が似ているな・・・」
成程、当時の年代はとにかく正規分布による分析が始まったらしく?とにかくこれに当てはめれば何とかなるよ的な発想に至った考えても変ではない。あくまでも個人的推測だが。
まず、Sa2.5 95%はドンピシャである。
Sa3は100%に対して99.7%これは品質管理上の現在でも使われている数値であるが品質管理上100%は期待値としては無い。本当はSa3は除錆率99.7%なのだろうが、「肉眼で判定」という一文により99.7と100%の違いを50年前の当時のヨーロッパ~ユーラシア大陸~アフリカ中近東~アジアまでに浸透させるのに99.7より切り上げて100%の方がいいだろうと至ったのは自然であると推測する。

では、Sa2 2/3以上という有理数の除錆率とσ=68%に関してだが、68%は2/3には絶対にならない。68%は34/50となり、2/3は0.666666・・・切り上げても0.67にしかならない切り下げると0.66すなわち66か67%というべきである。なぜならば95%とSa2.5はキッパリ言い放っているからである。この謎はたぶん誰もわからないと思う。そもそもISO8501-1には67とか68%とか書いてないのである。誰かが自然数表記に変えただけである。最初に制定した人はSa2辺りは少し、いい加減なブラスト処理だからσ範囲の68%→2/3以上見た目でできれば良しとしとこう!だったのかもしれない。

50年後、これが素晴らしく大当たりで今もって生き続けているのは正解に近いからであろう。

それと、Sa2の私なりの解釈は
67~68%の除錆率を目指してやるのではなく
世界の時間軸を∞として累積的に∞の人間にブラストさせたときに標準正規分布に従えば平均して68%除錆率が得られますよ。という意味であるとおもう。

要するに世界にはいろんな人がいるのだけど、それらに「ちゃんときれいに白くなるまでブラストしてね」という気持ち的には100%除錆率をしてねという言い方をして初めて得られるのがSa2なのであると考える。少なくとも統計論的にはそうであると思う。