高圧ブラスト

2017年7月30日日曜日

第438話 フェロニッケルスラグとアルマンダイトガーネットのリアル比較

ネオブラスト G1(日本製)
アルマンダイトガーネット(インド産)
フェロニッケルスラグ(*以後ネオブラスト)とアルマンダイトガーネット(*以後ガーネット)のリアルな比較を考察する。私の経験ではガーネットは25年以上、ネオブラストは5年ほど見てきたが、上記2種の比較に関しては答えが出たので簡単に記載する。ここでいうリアル比較とは学術論文的な意味ではなく使用者側の購入前提としたコストパフォーマンス比較の事である。将来的に為替や製造コストが変動した場合は評価が変わる。

ガーネット
天然産である。インド産、オーストラリア産、中国産の3原産地が主である。

オーストラリア産
最も良質=最古層から算出されるオーストラリア産(明るい紫)はすでにコースグレードは枯渇しているのでファイングレードが主である。。高価だが性能的には硬度が高く靭性もあるため優れている。

インド産
流通している0.5-1.0mm前後のものはインド産である可能性が高い。しかし、中国産を混ぜて販売するのがビジネス的に流行りなので気を付けなければならない。見ればすぐわかるのだが配合率はランダムなのと文句を言ったところで誰に言えばいいのか?インボイス発行で前金全額支払いし、倉庫から半年後、日本の現場で分析結果出たところで誰も取り合わない。本気で使うなら、原産国の工場を監視しインドの担当者とラッシーでも飲みながら仲良くならないとインド産純度の高いものは手に入らない。価格はガーネットとしては中。(濃い紫)塩分濃度が高い傾向にある。河口近くや海で算出するからである。

中国産
最後に中国産ガーネットだが、銅スラグのように黒かったり褐色アルミナのようにグレーっぽかったりする。特徴は水洗いしていない山間部の算出なので逆に塩分濃度は低い(筆者が自分で分析確認している。)当然粉塵は多い。価格は安い。ガーネットの外装袋を信用してはいけない。ズタ袋にオーストラリアとかインディアンとか書いてあっても意味がない。本物はそんな表示ではない。インド産はインドの輸出制限に引っかかったりで政治要素も含まれるので国際価格変動に左右される。中東の石油パイプラインで主にブラスト研削材指定されているため、日本には割り当てが少ない。

個人的には#80の本物のオーストラリア産バートン社製のガーネットをテスト用に5年ほど使っているが研削材としてはトータル的には90点近い。特に箱型装置で循環使用するとコストも割高ではなくなる。粒子径が選べないのが短所である。
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ネオブラスト 
これは商品名で、フェロニッケル系スラグが正式名称である。ネオブラストは山川産業の製品である。生産国はもちろん日本で京都府の北の方の工場である。バイプロダクト品であるため価格は低いほうであるが現在、工程上性能が変えられないため更なるコストダウンの必要がある。粒度等はしっかり管理されている。溶出等の検査も行っている。その点ではガーネットより安心である。研削材性能的には中の範囲である。スラグ系全般に言えるが手をかければコスト増なのでスラグが発生した時点での性能となる。例えば冷却温度と時間を変化させれば、靭性が向上するのだが実際はできていない。このネオブラストは靭性が無いのが短所である。もし、靭性が高くすることができたならば、ガーネットは日本においては必要なくなる。硬度と比重はOKな範囲である。ブラストによる研削効率は、悪くはない。性能ではなく他の研削材よりネオブラストが有利な点は、生産地が日本の真ん中(京都府)である点である。これは研削材ビジネスでは重要である。日本の物流コストは世界でも群を抜いて高コストである。インドから日本の港までのコストと港からユーザーまでのコストを単純比較するとインドから日本の船便コスト方が安いのである。例えばマレーシアでは研削材なんかは動いているのが不思議なくらいのトレーラーに70トンも積載して運んでくる。(+現在マレーシアでは交通規制が厳しくなってきているので無くなるであろうが)、また生産量が多い点も有利である。在庫がなく次回入手までに2か月とか言うこともない。粒度の範囲も選べるのも良い。更に最も重要な点では価格が現在最も低いという事である。銅スラグの方が確かに安いかもしれないが研削材としての問題はガラス質からくるブラスト後の皮膚に食いつくチクチク感など不快な点が多く数値だけでは比較対象とすべきではない。ネオブラストの効果的な使用方法としては2回の循環使用が良いと思える。思えるというのは試験施工が各地で現在進行形であるからである。1回目での使用で粉砕した粒度分析を行い、2回目に投入する量を決めながら常に全体の粒度分布を固定化させる方法である。ガーネットでは一般的な手法である。利点は1回使用でもなんとかコストバランスはとれているネオブラストに対して、2回使用でプラスに転じることは確定する。
もし、研削材自体に塩分や錆などの有害影響物質が規定値を超えた場合は、迷いもなく全量廃棄できる。元々、廃棄していたのでコスト面で全く問題ない。3回循環できれば最高だが、ネオブラストをテストしてきた感じでは靭性不足で無理であろう。まぁ欲張らない方が良いのである。現在ネオブラストを循環使用させている低価格選別機を下に紹介する。