高圧ブラスト

2017年8月30日水曜日

第444話 ミャンマーでのブラストルーム  インストール1

本日からミャンマーに弊社とパンブラの共同開発したブラストルームを現地へ納品、据え付け、試運転が始まった。かなり、納品段階の税関や陸送でも時間が掛かったが、想定内で現地入り1日の遅延でなんとかスタートした。大型トラック2台分である。






2017年8月23日水曜日

443話 インスペクターについて (脱線話)

日本にインスペクターが存在しない理由

これは、日本が戦後、復興にかけて単一民族でものつくりを始めた習慣が残っている。要するに「性善説」である。私が講義で良く説明しているのだが、私も含めて日本人が何かしらブラスト処理を行わなければならない場合、「どうやって打ち残しが無くきれいにブラストができるかなぁ。」とまず思うわけであり、やすりや電動工具ではなくせっかくブラストをするのだから、錆や塗料カスが全くついてない状態にしたいと思う、これこそがブラストで言う「性善説」なのである、要するに平たく言えば、日本人が日本でブラストするなら初めから言わなくてもSa3を狙うのが当然である、という事である。
日本で初めて本格的な研究をされた1953年福田連(むらじ)氏著書の「ブラストクリーニングとショットピーニング」出版(絶版)にも記載されている。技術書ではあるが日本人のブラストに対する心得的なことも記載されているので私も感動した。
なので古いケレン規格 Ⅰ種ケレンは目標Sa3(*実際は処理度は記載されていない)しか存在しない意味なのである。よってブラスト関係者全員がSa2.5-3がブラストだと信じインスペクターなど必要なかった。それ以外は手抜きか下手くそなブラストと信じられていた。
しかし、海外、特に北米ではブラスト作業自体は移民や出稼ぎのマイノリティが行っているため「性善説」などは通用しない。当然移民と言っても北米の150-200年の歴史のあるドイツ系やアイルランド系の事ではない。これらの出稼ぎブラストマンたちはブラスト自体、何のためにやるかなど知らないわけで時間と賃金の方が重要であるためやれと言われたらやるだけで、真っ白にブラストすることなど概念が無いのである。私が35年ほど前に「知の論理」という本を読んだときにこの意味を解くカギが書いてあった。文字の概念が無いアフリカの部族に簡単な絵の地図を見せたところ誰一人理解できなかったというテスト報告があることを記憶している。国によっては橋も車も鉄道も見たことがない人がいるわけであり、その人にブラストをさせても真っ白にブラストされることはない。そういう経験の中で北米はいち早くインスペクター方式を採用することなった。
現在の日本の場合、これがごちゃ混ぜになっている事が事態を複雑化させている。何十年も日本でブラスト処理で信頼を得て経営してきた施工会社は、黙っててもSa2.5以上で仕上げてくる。しかし、国内のここ数年の建築業の景気に乗じてブラストを始めたりしたところは下請けとして行うため無理をしてる場合が多くブラスト処理度合いはばらつく。当現在はインスペクターがいないのでSa2.5を指定されていてもSa1程度で指摘されなければ次工程に入ってしまう。インスペクターを置かないもしくは予算化していない元請が悪いのである。米軍の設備のブラスト及び塗装しか請け負わない塗装会社が日本にあるが、自分たちの工賃よりもインスペクターの方が数倍高い賃金をもらっていることをぼやいていた。あたり前の話なのだが、わざわざ、アメリカからビジネスクラスの旅費でインスペクターがやってきて検査するのだ。指導をするインスペクターもたまにはいるが、一切しないインスペクターもいる。私は最近、在日米軍の技術将校から直接相談を受けていたのだが、日本国内にある米軍のブラスト機を規格に合わせてほしいという内容だった。すぐさま、対応したのだが私からすればこちらから数年前から指摘していたのに漸く動いたのかぁと思った。北米のインスペクターが米軍に来日する都度にブラスト機が基準を満たしていないのでダメだ、と再三言われているのに意味が解らないもんだから日本側はやり続ける。呆れ果てて、しまいには米軍側がハワイやサンフランシスコからブラスト機器を大量に持ち込んで日本側に作業させるのだが、日本で消耗品が手に入らないため暫くするとブラスト機器が放置される。実に滑稽な風景である。
米軍からすれば米軍基地は日本ではないし、軍艦関係はアメリカの所有物なので、規格外のブラスト、防食塗装をされては困るので彼らは真剣なのだが、彼らからすれば「外人」の日本側がインスペクターの指摘を素直に受け入れてくれないわけである。そもそも、インスペクターの概念など日本に無いからである。私の知っている範囲では米軍の防食関係の技術将校はとても紳士的なアッパーグレードな人が多くブラスト及びブラスト装置の知識が豊富である。
今後、
東南アジアからのブラスト作業者移民が押し寄せれば事態は変わると思うがその可能性も移民が生活するときの言語の問題で難しい。海外で1回でも仕事をした人には容易に理解できることだが、我々の場合なら英語が通じる国と通じない国での不安度や進捗度が違う。遊びや観光なら何とかなるが仕事の場合はそうはいかない。立場が逆でも同じである。全く言語の通じない人に日本でブラストをやらせてSa2.5は達成してもその人自体が日本で生活できるようになるまでは時間が掛かる。安心して生活できるようにならなければブラスト作業もはかどらない。当然やる気次第だがそのくらいやる気があるなら普通はドバイとか北米に行くと思う。こんなことが、日本の工事現場で外人が90%以上でない理由である。しかし、中華料理屋の進出とカレー屋の進出で中国人、インド系(インド人ではない)人の多くが独自コミュニティを形成しはじめている。まだ飲食関係の範囲だがいつ、工事関係に転ずるかわからない。以前のようなバブル期のイラン人のような出稼ぎでなくコミュニティを形成すると進出が早い。外人で社会が成り立っているシンガポールがいい例である。当然、英語を言語として採用しているのが大きい。日本人のコミュニティも歴史が長いのでビジネス基盤も盤石だ。これに対して恐ろしく厳しい法整備と治安維持及び財産管理を国が統制している。

2017年8月22日火曜日

第442話 素地調整グレードについて(脱線話)

塗装下地処理のブラスト処理における素地調整グレードにおいてSa1~3まで4段階にISO/JISでは分けられている。これについてはご存知の通り、国際規格であり、海外で考案されたものである。非常に優れた規格であるので、世界中どこでも通用するのだが、意味を履き違えるととんでもなく、使えない規格になる。
これは国際規格で限定されているのはあくまでも、
塗装下地処理前の金属面に対してのみの規格である点である。
また、目視判断であることも重要である。
この2点だけでも論文ダンボール箱10箱分を超える話なのだが、世界中でまじめに研究されてきた。海外の塗料製造会社もSa1指定する場合とSa2.5を指定する場合は全く目的が違うためその都度テストを行ってきている。だから、やみくもにSa2.5以上を指定している塗料を選定してはいけない。本題に戻るが、海外では上記のグレードがわからないという初歩的な問題は起きていない。またブラスト施工業者のブラスト処理の良し悪しは存在しない。段取りの悪い業者などは存在するがブラストが上手とか下手などは存在しない。
日本でも本来同様なのだが、ブラストに上手いも下手も今後も世界共通で存在しない。
なぜかと言えば、金属面の切削や磨き、絞りと言ったまだ、機械が職人の技術を超えることができない分野ではなく、あくまでもISO8501-1に準じた処理規格に合わせるだけのことで、「きれい」な仕上げをすることではないのである。
極端な言い方をすればブラストが完全でないところもあえてそのままにしなければならない規格なのである。その点ではかなりアバウトな規格である。これは、そもそも塗料を金属付着させるというアバウトな事をする手段であるからに他ならない。
ブラスト処理面を見てロボットのやった、Sa1が生まれてはじめてブラスト処理をした職人のSa3に「きれい」度で超えてはならない。
さらにSa1やSa2に関しては十人十色のブラスト処理になるが、当たり前なのである。
Sa2は33%のシミや窪みの中の塗料などが残ってもいいのである。それも顕微鏡ではなく「目視」で判定することであり、塩分などについてはきちんと他の方法で除去することと記載されているのである。
この当たり前を論議している人が国内外に多くいるが、その人たちは独自規格を社内か研究所で個人的に作成すべきであって、永遠に国際規格にはならないので論議しても無駄である。規格に書いてあることをよく読んだほうが良い。規格とはそういうものである。

This part of ISO 8501 identifies four levels (designated as “rust grades”) of mill scale and rust that are commonly found on surfaces of uncoated erected steel and steel held in stock. It also identifies certain degrees of visual cleanliness (designated as “preparation grades”) after surface preparation of uncoated steel surfaces and of steel surfaces after overall removal of any previous coating. These levels of visual cleanliness are related to the common methods of surface cleaning that are used prior to painting.
This part of ISO 8501 is intended to be a tool for visual assessment of rust grades and of preparation grades. It includes 28 representative photographic examples/

特に間違えているのは、ブラストマン(ブラスト処理者)がブラスト処理規格を知っているは良い事なのだが、Sa1-3を判断して次工程へ移行している事である。これは全くありえないことで職業自体や立場が全く違う。判断する仕事はインスペクターが行うのである。社内規格が別にある場合や趣味のブラストなら問題はないのだが。
インスペクターはブラスト処理業者が行うものではなく全く別の会社の人であり、日本で言えば元請が独自に派遣するのである。インスペクターは高度な知識と経験が必要とされるので海外ではチームで派遣されることが多い。一定の試験合格者か論文経験者が多い。
アメリカではKTA社などが有名である。ブラスト業者側がネゴシエーターとしてインスペクターを抱える場合もある。いずれにしても、インスペクターなきブラスト現場は交通警察官がいない、高速道路と化してしまい、ルール無用のレース場で事故続出である。
これは、ブラスト業者が悪いのではなくインスペクターを置かない、雇わない元請が悪いのである。日本がまさにこの状態であるので、ブラスト業者が自治を始めようとしているが無理がある。解決策は元請を教育しインスペクターを置くしかない。




2017年8月18日金曜日

第441話 第57回防錆技術学校面接講義 東京会場 物理的機械的素地調整方法 10月5日

第57回防錆技術学校面接講義 東京会場 物理的機械的素地調整方法 10月5日
今年で私は7年目すなわち7回目の講義となります。本当は年に4回程度させてもらえれば
かなり、納得いく内容となるのですが1回2時間以内ですからかなり駆け足の内容となっています。当然、私はブラスト装置屋なのでブラストに関する素地調整の説明にほぼ全力に重点を置きます。毎年、トピックや新しい規格などについて内容を変えているのですが、いつも、時間切れで十分話し切れていません。なので、今年は原点に戻ってSa1~3についての話を盛り込むのと、研削材の管理についても時間があれば話そうと思います。

2017年8月3日木曜日

第440話 塗装、溶射におけるブラスト処理に関するデータの注意点 (ピーニングは含まない。)

以前から記載しているのだが、相変わらず国内の発表論文に関してブラスト条件が記載されていないことが多い。
ブラスト処理の場合、国内外必ず共通しているのが

1)ノズル先端の内径と圧力
2)研削材の種類と粒度 (規格記載か粒度分布表添付)
3)ブラスト距離と角度
4)ブラストバルブの開度と噴射量の実測値(ブラストバルブのメーカーと写真)

1)に関してはメーカーと形式記載。 粗悪品と良品では出口速度で2倍も変わる場合があるがそうするとエネルギーは4倍違うため結果が一致しない。
また、ブラストホースの長さと内径も付記すべきだが先端圧力記載してあればなくても同一の結果が得られる。

2)説明するまでも無

3)これは、作業者が手打ちの時は努めて維持させる。自動機の場合は必須。

重要なのは当然1)なのだが、全くデータにならなくなるのは4)が原因している。
ピーニング系のデータの場合はマグナバルブのようにフィードバック制御式を使用するので問題ないが、普通のブラストの場合はバルブの形状が各社ばらばらである。
世界的な流れでトンプソン型もしくはシュミット型が世界の6割以上を占めているので
海外論文では再現性に問題ないのだが国内はまだ全体の1-2%くらいなので海外論文と結果が一致しない。
トンプソン型バルブ

補足すると、国内ではよく”ブラスト試験片”なるものが使用されている。
販売品なので、ブラスト条件を一致させるために使用するのだが実戦向きではない。
このテストピースを使用した結果だと、条件が限定されてしまい実際の現場ではそのようなブラスト下地処理環境は作り出せないためである。
まず、基準となるデータ用にこの”ブラスト試験片”を使用するのは良いと思う。
しかし、他の研削材のブラスト試験片がないため、結果的には現場で再現性がないのである。国内論文を拝見すると往々にして、そうであるため現場では採用しても違う結果が出る。北米系の論文や記事に目を通すと1)~4)まで完全に書いてあるのはさすがに少ないが、研削材条件は多い。コールスラグとガーネットくらいは必ず平行テストしている。
グリッドで作成したテストピースはあまり採用しない。結果が良くて当たり前なのでやる必要がない。









2017年8月1日火曜日

第439話 箱型ブラスト機のバルブの改造

箱型ブラスト機で研削材をアルミナやフェロニッケル系スラグなどを交換しながら使用しているユーザーは大抵研削材の混合比が安定しない不満があるのと、消耗品の減り方や価格に不満を持っている。
研削材の混合比が安定しないのは改造すれば解決できるので従来から行っているが、アルミナだけは注意が必要でアルミナ対策用トンプソン型バルブ(30万円相当)かシュミットバルブを使うしかない。シュミットバルブの場合は圧力開放制御しなければならない。