高圧ブラスト

2017年8月22日火曜日

第442話 素地調整グレードについて(脱線話)

塗装下地処理のブラスト処理における素地調整グレードにおいてSa1~3まで4段階にISO/JISでは分けられている。これについてはご存知の通り、国際規格であり、海外で考案されたものである。非常に優れた規格であるので、世界中どこでも通用するのだが、意味を履き違えるととんでもなく、使えない規格になる。
これは国際規格で限定されているのはあくまでも、
塗装下地処理前の金属面に対してのみの規格である点である。
また、目視判断であることも重要である。
この2点だけでも論文ダンボール箱10箱分を超える話なのだが、世界中でまじめに研究されてきた。海外の塗料製造会社もSa1指定する場合とSa2.5を指定する場合は全く目的が違うためその都度テストを行ってきている。だから、やみくもにSa2.5以上を指定している塗料を選定してはいけない。本題に戻るが、海外では上記のグレードがわからないという初歩的な問題は起きていない。またブラスト施工業者のブラスト処理の良し悪しは存在しない。段取りの悪い業者などは存在するがブラストが上手とか下手などは存在しない。
日本でも本来同様なのだが、ブラストに上手いも下手も今後も世界共通で存在しない。
なぜかと言えば、金属面の切削や磨き、絞りと言ったまだ、機械が職人の技術を超えることができない分野ではなく、あくまでもISO8501-1に準じた処理規格に合わせるだけのことで、「きれい」な仕上げをすることではないのである。
極端な言い方をすればブラストが完全でないところもあえてそのままにしなければならない規格なのである。その点ではかなりアバウトな規格である。これは、そもそも塗料を金属付着させるというアバウトな事をする手段であるからに他ならない。
ブラスト処理面を見てロボットのやった、Sa1が生まれてはじめてブラスト処理をした職人のSa3に「きれい」度で超えてはならない。
さらにSa1やSa2に関しては十人十色のブラスト処理になるが、当たり前なのである。
Sa2は33%のシミや窪みの中の塗料などが残ってもいいのである。それも顕微鏡ではなく「目視」で判定することであり、塩分などについてはきちんと他の方法で除去することと記載されているのである。
この当たり前を論議している人が国内外に多くいるが、その人たちは独自規格を社内か研究所で個人的に作成すべきであって、永遠に国際規格にはならないので論議しても無駄である。規格に書いてあることをよく読んだほうが良い。規格とはそういうものである。

This part of ISO 8501 identifies four levels (designated as “rust grades”) of mill scale and rust that are commonly found on surfaces of uncoated erected steel and steel held in stock. It also identifies certain degrees of visual cleanliness (designated as “preparation grades”) after surface preparation of uncoated steel surfaces and of steel surfaces after overall removal of any previous coating. These levels of visual cleanliness are related to the common methods of surface cleaning that are used prior to painting.
This part of ISO 8501 is intended to be a tool for visual assessment of rust grades and of preparation grades. It includes 28 representative photographic examples/

特に間違えているのは、ブラストマン(ブラスト処理者)がブラスト処理規格を知っているは良い事なのだが、Sa1-3を判断して次工程へ移行している事である。これは全くありえないことで職業自体や立場が全く違う。判断する仕事はインスペクターが行うのである。社内規格が別にある場合や趣味のブラストなら問題はないのだが。
インスペクターはブラスト処理業者が行うものではなく全く別の会社の人であり、日本で言えば元請が独自に派遣するのである。インスペクターは高度な知識と経験が必要とされるので海外ではチームで派遣されることが多い。一定の試験合格者か論文経験者が多い。
アメリカではKTA社などが有名である。ブラスト業者側がネゴシエーターとしてインスペクターを抱える場合もある。いずれにしても、インスペクターなきブラスト現場は交通警察官がいない、高速道路と化してしまい、ルール無用のレース場で事故続出である。
これは、ブラスト業者が悪いのではなくインスペクターを置かない、雇わない元請が悪いのである。日本がまさにこの状態であるので、ブラスト業者が自治を始めようとしているが無理がある。解決策は元請を教育しインスペクターを置くしかない。