高圧ブラスト

2018年5月6日日曜日

第471話 AI型ブラストロボットの条件データの蓄積方法と今後の業者の在り方

AI型ブラストロボットというものは勝手に今後生まれてくるわけではない。
特にニッチなブラスト産業などはデータ数が少なく今後もかなりの時間を要するだろう。
しかし、今この分野に頭を突っ込む前の顔ぐらいは見せておかなければ、今後海外から相手にされなくなる。今まではブラスト処理に関する科学的な研究はそれほどなされていなかった。ブラスト処理後の表面の状態と後工程の研究はなされていたが、例えば研削材種類、投射速度、混合比、ノズル、角度、距離、処理速度、圧力などのデータすら存在しない。
AI型ブラストロボットにデータを蓄積する際に、このくらいを最低自律判断できなければわざわざ、ロボットに置き換える意味がない。
現在の技術ですでに上記の条件を可変させることは可能だ。一般的には作業者が「勘」でやってる。その後ブラスト装置の条件が固定で、作業者は角度、距離、処理速度を変化させて目視により判断している。
例えば上記のような、よくあるタンク容器内のブラスト処理で閉鎖されているためマンホールから作業者が入り込みブラスト処理するため、粉塵がひどく視界が全く働かない。送気用のダクトをマンホールに突っ込むが気休めにしかならない。20年前くらいに私の知り合いの業者にこの仕事を紹介して200基以上処理してかなり利益を出したようだが最後はタンク内の臭いと体中が痛いのと閉鎖空間での作業が嫌になって止めてしまった。その後、臨時の作業者にやらせてたそうだが品質が維持できずに最後はあきらめてしまった。
この手の仕事は1日1個できれば御の字なのだが、365日休まずやれる人はいない。
現状として、タンク内で乱射するしかない。なので粉塵が収まってから何度も検査しては再ブラストさせる。私がスチールグリッドを勧めたが研削材は珪砂(当時は問題なかった)を使用する事に決まっていた。理由は「処理面が白くなるので検査が通過しやすい」という事だった。夏場はとにかく暑いので検査官も入りたがらない。
こんな環境中でSa3処理が指定されていた。そもそも、人間ではできない作業なのである。結果的には容器は期限を設定して使い捨てになったのだろうが、莫大な買い替え費を強いられているため活気がなくなった。

上記のケースをアルファ1ブラストロボットに置き換えてみた場合はどうか?
会社の担当もしくはオーナーのマインドによるが、かなり業務形態は変わる。
人間というものはとにかく繊細にできているため、環境に弱いがロボットは臭い、疲れ、休憩、粉塵、お金、ケガ・・・など一切かかわりがない人事管理が無くなる。
しかし、ロボットの場合は現場任せと言う考え方は存在しない。
一つ一つの仕事の重さが変わるのだ。今まで意識せずにブラストホースの捻じれを作業者は滑らせることで解消していたがロボットは教えてやらないといけない。ブラストノズルすら自分から掴むことはまだ、アルファ1ブラストロボットではできない。
移動に関しても自分で歩けないため設置してやるか移動台車に載せて移動させてやる。
移動に関しても人間の手助けが必要だ。過酷な環境の中でブラスト処理をアルファ1ブラストロボットにさせている間に人間は次の方法を考えなければならない。
ブラスト条件に関しても一回一回が重要なデータとなる。シュミレーション機能があるため結果から次のブラスト処理方法を検討する。この様にしてデータを蓄積して強い人工で能へと移管して行く業務内容となる。とてつもなく膨大で地味な作業となるが無駄にはならない。ロボットの管理は難しい事でもない。人間の管理の方が難しい。


IT関連に現在、若い技術者が奪われ我々の様な一見すると時代遅れで汚いイメージしかない業種に集まらない。そのため、国内ブラスト業界には技術者のボトルネックが発生しており確実に以前よりレベルが下がっている。何もしなければブラスト技術的には10年以内に壊滅するだろう。私自身も以前のままなら全く興味も面白さも何もないので若い技術者を引き込もうとは思わない。作業者によるブラストのコスト及び品質の優位性に関しては昨年にミャンマーにブラストルームを納品した時点で結論が出ている。http://highblast.blogspot.jp/2017/09/445-2.html
アップカミングな国に対してはどうあがいても勝てない。

であれば、日本らしさでブラストで勝負するとなれば緻密なデータ蓄積によるブラストしかないのではないか?日本国内のブラスト処理ロボットデータの共有解析などが業者間の在り方となる。日本人ならスマホくらい誰でも使えるのだからブラスト処理ロボットなどが難しい訳ではない。なにはともあれ、若い有能な考える技術者をこの業界に引き戻さねなければいずれにしてもAIロボット云々の前に壊滅するだろう。