高圧ブラスト

2017年11月11日土曜日

455話 大型ショツトインペラーブラストシステム 自動


ショツトインペラーブラストシステムはエアーブラストシステムに対して工場内でブラストするには非常に有効な装置である。
構造はインペラー、ローターがモーターにより回転しておりそこにスチールショツトを流し込み遠心力でワークに叩きつけるという至って単純な構造のため大量に処理しなければならない物には有効だ。主に、H鋼や平板、鋼管などに対してはエアーブラスト処理などは及びもつかない。理論的に最大速度70-80m/sしか出ないため塗膜剥離作業には向いていない。ミルスケール落としなどのいわゆるISO-JIS規格用語の「工場ブラスト処理」と言われるたぐいだ。
大量に大きな物の部品をブラストするには、ショットブラスト装置が有効なのだが
日本では大手の会社でしか見かけない。
理由は一億円以上するからだ。
実際問題、複雑な装置ではないのだが日本では不況が多く、この手の装置を手掛けるメーカーが現在1~2社の状態で一品もの特注物件となってしまった。
しかし、海外ではいまだに、標準機の領域であるので装置としてもこなれている。
今回、日本国内向けに関東アスコンの方でパンブラストから大型自動ショツトブラスト装置の導入を計画している。
2m-2mくらいまでのワークなら何でも入れることができる。
処理グレードはSa2.5-3までは可能だが、陰になるところはひっくり返した方がいい場合とエアーブラストで処理し直した方が良い場合がある。大径パイプも簡単にブラストできる。
よく
「どうせエアーブラストで処理し直すのだから、初めからエアーブラストで全面処理したほうが良いし、早いよ。」
と言われることがある。

実はこれは日本では全く意味が通らない。しかし、海外の場合は意味が通る。
前回、納品したミャンマーのような国の場合、ブラスト作業者の一日のコストが2000円/日(賃金は800円/日)なので日本の平均的最低賃金の28000円/日に合わせれば14人雇える。
実際には日本で1人でやるところをミャンマーで4-5人で同時ブラストするわけでそれが、3交代して行くので、複雑な形状のワークの場合は
初期投資含めても下記のような装置を導入するよりも早い場合がある。
しかし、日本ではコストも含めて絶対に成り立たない。
特に、建築関係部材や船の外装部品、配管部品は成り立たない。

処理グレードの中で、エアーブラストの強みは塗装済みのワークの再塗装に伴う素地調整なのである。
ショットブラストで処理する場合は主に黒皮除去 Aグレードから浮き錆B~Cグレードが適している。なので、
日本をはじめとする工賃が高い国の船、橋梁、重機、プラント設備などの製造で新品の製造工場ではシヨットブラスト装置を導入するのが常識なのである。

ところが、現在その現象が反転している。
例えば中国やインドのように人口は多く日本よりはコストは低いがミャンマーやベトナムと比べればかなり高くなってしまっている国ではさかんに、大型ショツトブラストマシーンの導入が行われている。反面日本のような、かつて重工業が盛んであったが、度重なる不況と労働者のコストの増大により廃業が続き、今になって景気が良くなってきてしまい、大型ショットブラスト装置を製造するメーカーもなく、古い設備も処分済みのため止む無く、簡易で安く手っ取り早く仕事ができるエアーブラスト処理の設備を導入がこの3-4年間で進んだ。しばらくは、まだ進むと思われる。このまま、日本の景気が悪くなればコストバランスが合うので良いのだが(大抵の経営者はそう考えている)そうでない場合はパンクする。なぜか?実はエアーブラスト処理を人間にやらせている場合、最大の問題にぶち当たる。それは、飽きるのだ。厭きると書いた方がよい。
屋外の橋梁の塗り替え工事の場合はなぜ飽きないか?それは移動があり、街や自然の中で仕事をするため「旅」が伴い楽しさがあるからやってられるのだ。
それが来る日も来る日も、狭い部屋の中で毎日、数時間も鉄臭い香りの中で同じ鉄板相手にブラストだけをしていて厭きないわけがない。厭きたら最後、進展や希望は無い。
暗く、つまらない作業に喜びなど感じるわけもない。

では、解決方法はどうするか、
簡単な方法が一つだけある。いや、一つしかない。
現在、ブラスト処理業が現役の国から装置を導入するのが一番良い方法である。
日本で全く同じものを作ったら価格が5-10倍近くするし、納期がかかる。
国外なら標準機なのだ。下記のものでエアーブラスト作業者に置き換えれば
10人分に相当する。
作業者コスト 2.8万×10人=28万円/日


装置コストが1億の場合
357日毎日稼働させれば、元が取れる。月20日稼働で約1.5年だ。利益を考えれば倍の3年間はコンスタントに稼働しなければ無理だろう。
ただし、装置維持代、電気代などや消耗品コストは無視ししているのと、それだけ毎日物量がある前提である。少なくとも、100万円/日のブラストの仕事が無ければ経営的には無理だろう。日本の国内なら製鉄系などかなりの大手企業に限られる。

では装置コストが2000万の場合
72日毎日稼働、月20日稼働で約3.5か月、倍の7か月コンスタントに稼働すればよい。
7か月で元を取る必要が無いので例えば、3年間で元を取りたければ36か月なので
月の稼働数を1/5にしても十分安全である。

結論
中小企業でも十分ペイする装置コストの
2000万で海外から引っ張ってくればいいだけの事となり、実行の計画に移ったのである。